ドイツの乳製品 ※2009年10月作成


ドイツのスーパーマーケットに所狭しと並ぶ乳製品の数々。でも実際に購入してみようと思うと、何ものかわからず、パッケージのドイツ語を読んでも難しく、買ったことがない・・・なんていう経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。乳製品はカルシウムが豊富で、脂肪分の量を調整しているものもあり、しかも安価で、ドイツで健康的な生活を送るために利用しない手はありません。今回は数多い乳製品の中で、特に飲み物系に注目してみました。

牛乳

種類 脂肪分
全乳 3.5%以上
低脂肪乳 1.5〜1.8%
脱脂肪乳 0.3%以下


 
注1) パッケージに記載されているhomogenisiert(均質)という表示は、クリーム層の形成を防ぐ処理がなされているということを意味します。
注2) 低脂肪乳および脱脂肪乳は全乳と違い多少のビタミンの損失があります。
殺菌法 所用時間 特徴
低温殺菌牛乳
(Pasteurisierte Milch)
72〜75度 15から30秒 
85度以上 4秒 
62から65度30から32秒
ビタミンを破壊しない
高温殺菌牛乳 (H-Milch) 135℃から150度 15秒 腐りにくい 常温で約6ヶ月保存可
減菌牛乳 115から118度 20から30分 一番ビタミンを損なう 常温で一年保存可

  
  
  
  

乳製品の歴史

乳利用の起源には様々な説がありますが、新石器時代に,牛,羊,山羊の家畜化が進んだ中近東あたりで乳の利用がはじまったと考えられています。
乳の中の乳酸菌によって乳糖が乳酸をつくり,その乳酸がたんぱく質を固まらせると同時に,腐敗菌の発育が抑制されます。これが発酵乳で,どろどろと凝固したものを集めたものがヨーグルトのはじまりです。生乳を加熱せずにそのまま乳酸発酵させることができたのは,ヨーロッパ,ロシア,モンゴル,東アジア高原などの気温の低い地域です。
搾乳後の生乳を静かに置いておくと,表面に脂肪分の多いクリームが浮いてきます。このクリームをかき回して,乳脂肪の固まりを集めたものがバターです。この製法は気温の高い地域ではできないため,ヨーロッパを中心として寒冷な地域に発達しました。
チーズは偶然に発見されたと考えられています。それは,砂漠を旅していた商人が,羊の胃袋で作った水筒に入れたやぎの乳を飲もうとしたとき,白い固まりが出てきたという古いアラビアの民話があるからです。羊の胃袋の中のレンニンという酵素が乳に働いてチーズ状のものができたのでしょう。乳をあらかじめ乳酸発酵させてからレンネットを添加すると,主要なたんぱく質であるカゼインが凝固します。この固まりを圧縮し熟成させたものがチーズです。このように,チーズは,古代の中近東にはじまり,ヨーロッパ,北アフリカ,東アジア,インドへと伝播したと考えられています。 
牛乳の知識が日本へ渡来したのは6世紀のなかばで,仏教とともに乳を利用する文化が伝えられた。善那(ぜんな)という帰化人が,孝徳天皇(597〜654年)に牛乳を献上したところ,天皇はたいへん喜ばれました。 
奈良・平安の時代に牛乳や加工品を飲食していたのは,天皇をはじめとして,貴族や大金持ちなど一部の人 でした。

 

乳製品の分類図



中央の「生乳」が全ての元になります。
通常良く目にする「牛乳」は「生乳」を殺菌後にパックしたものです。
「生乳」は「低脂肪乳」と「乳脂」に分離され、「乳脂」は乳脂肪分を調整して様々なクリームへと加工されます。また乳酸発酵をさせると「ザウアーラーム」へと変化し、脂肪分を違えることで種々の「サワークリーム」が出来上がります。「シュマント」「クレームフレッシュ(仏語)」もその一種です。
「ザウアーラーム」の脂肪分を取り出したものが「ザウアーラームバター(いわゆる発酵バター)」で、普通のバターが乳酸発酵していない「乳脂」から作られるのと比べ、違うラインをたどっています。
「低温殺菌乳」からは数々の乳酸発酵食品が作られます。おなじみの「ヨーグルト」をはじめ、ドイツでよく使用される「クワルク」もこの仲間です。「乳酸発酵乳」のなかの「ザウアーミルヒ」と「ディックミルヒ」の違いは濃度の違いだけです(前者が薄く、後者が濃い)。クリームを分離させると「バター」が出来ます。この際分離した水分を「バターミルク」と呼びますが、ドイツで商品化されている「ブッターミルヒ」はその後加工されているので、あえて言語表記を変えています。
クワルクの製造により副産物として「ホエー(乳清)」が出来上がります。乳酸発酵していますので酸味があるためドイツ語表記では「ザウアーモルケ」となっています。これに対し、「生乳」から作られる「フレッシュチーズ」の副産物である「ホエー(乳清)」は酸味がないので「ズースモルケ」と呼ばれますが、実際は甘くありません。
図の中の食品の名称は、日本語、英語、ドイツ語、フランス語が混在しています。一つの言語に統一するよりも日本人にとって一番なじみのある名称を選択したつもりですので、どうぞご了承ください。こちらの図はドイツのウィキペディアを参考にしました。

以下、日本ではなじみの少ない乳製品をご紹介します。

 
モルケ(Molke)

モルケは生乳からチーズを作る時に生じる緑がかった黄色の透明な液体で日本では乳清(ホエー)と呼ばれるものです。水分94%、乳糖4〜5%から成り、脂肪分を殆ど含んでいません。しかし、乳酸、ビタミンB1、B2、B6、カルシウム、カリウム、リンやミネラルの他、モルケプロテインを0.6〜1%含んでおり、栄養は豊富です。
モルケはいろいろな飲み物に混ぜられます。その他は粉状のものが化粧品に使われたり、たんぱく質を含んだモルケパウダーはパンや乳製品の製造やビールの醸造に利用されたり、肥料としても使用されます。
私達が普段よく目にするモルケは、マーケットの乳製品売り場で、500ミリリットルのヨーグルトの容器や飲み物のボトルに入っている“飲み物”としてのモルケで、いわゆるヨーグルトの上澄みのようなピュアなものと、りんごやみかんなどの味をつけた物が売られています。
 
シュマント(Schmand)

生クリームから作られる乳製品の一種で、生クリーム原料の酸味が強くなったものです。
サワークリームやクレームフレッシュと同様にドイツでは使用されます。冷蔵と常温のものがあり、常温のパックは日持ちがいいので予備に買っておくと便利です。脂肪分は20%以上がシュマントの規定です。ロシアでは20%、30%、40%と脂肪分が分かれて販売されています。東欧で主に使われる乳製品の一つともいえます。
料理法としては、グラタン、キッシュ、ケーキなどのオーブン料理、または生クリームのようにそのままケーキに使用されます。その他、クリームチーズやクワルクのようにハーブやにんにくを混ぜ合わせパンやベークドポテトにかけたり、野菜やクラッカーのディップによく使われます。ロシアのボルシチのように食べる直前にそのままスープやシチューに混ぜ合わせることもあります。
シュマントの語源はシュメッタリング(ちょうちょ)からと言われています。シュマントを加えることによって料理がまろやかに美味になるということなのでは?

シュマントクーヘン(直径20〜28cm丸型)
 たまご 3個
 砂糖 100g
 塩 少々
 バニラシュガー 3/4袋
 シュマント 250g
 小麦粉 200g
 ベーキングパウダー 1袋
ボウルにたまごをときほぐし砂糖、塩、バニラシュガーを加えて5分ほど泡立てます。
シュマントを加え更に良く混ぜ、小麦粉とベーキングパウダーをあわせたものを加えて混ぜます。
バターをぬった型に生地をいれ、表面をならして175℃のオーブンで30分程度焼きます。型の大きさによって生地の厚みが異なってくるので、焼き時間は加減してください。
このままでも美味しいですが、好みでアーモンドスライスのトッピングをすると良いです。
トッピングの材料(バター30g、砂糖25g、バニラシュガー1/4袋、アーモンドスライス50g、牛乳大匙1)を混ぜ合わせ、生地がほぼ焼けた頃に一旦取り出して表面に塗り、温度を200℃に上げて色付くまで焼きます。


左:シュマント 右:クレームフレッシュ
クワルク(Quark)

クワルクはミルクに乳酸菌や酵素を加えて固め水分を取った、熟成させないチーズの一種です。クリームの添加割合によって、乳脂肪10%未満、10%、20%、40%のものがあります。ヨーグルトのような酸味と、くせのない穏やかな味わいが特徴です。
ローファットのものは乳白色で、脂肪分が高いほど黄色味がかっています。
ヨーグルトのようにそのまま食べたり、お菓子や料理の材料につかったりと色々楽しめます。ドイツでは良く、チーズケーキKäsekuchenにはクワルクを使用しています。

いちごのクワルククリーム
いちご 500g
粉砂糖 適宜
クワルク 250g
砂糖 大匙1
バナナ 1本
生クリーム 200cc
いちごは洗ってへたを取り二つに切って、好みで粉砂糖をふり掛け冷やしておきます。
バナナはフォークなどで潰し、生クリームは泡立てておきます。
クワルクに砂糖を加え混ぜ、バナナと生クリームを合わせ冷やします。
いちごの上にこのクリームをかけて供します。いちご以外の果物でもどうぞ。
ディックミルヒ(Dickmilch)

Dickmilch(別名Stockmilch、オーストリアではSauermilchとも呼ばれる)は牛乳から作られる乳製品の一種です。昔は加熱されない生乳から作られましたが、今は低温殺菌牛乳の乳糖をバクテリアで乳酸発酵させて生産されています。乳酸発酵により、ミルクがとろりと濃くなるのでDickmilchと呼ばれています。ヨーグルトに比べて酸味がマイルドで食べやすいのが特徴で、シリアル等に混ぜる場合砂糖を足さなくてよく、糖分摂取が抑えられるので健康的です。ドライフルーツを入れるととてもおいしく食べられます。しかし、脂肪分は3.5%から10%あるので注意が必要です。Dickmilchはそのまま飲用、食用に用いられるほか、SpeisequarkやSauermilchkäseの製造に使用されます。
お勧めレシピ 各種サラダソース(イタリア風ヌードルサラダ、辛子生クリームソースの鰊サラダ、チキンサラダ)、ワッフル
ケフィア(Kefier)

ケフィアとは、乳酸菌と酵母の共生発酵によって生まれるアルコール発酵乳の一種で、発祥地は、コーカサス地方とされています。カリフラワーに似た形の「ケフィアグレイン」を、牛乳のなかに加えて自然発酵させると、飲むヨーグルトに近いどろどろした乳飲料ができあがります。飲むと、炭酸のようなピリッとした刺激と酸味が口にひろがります。
ケフィアグレインは酵母や真正細菌の結合体であり、健康に利点があるというため、ケフィアは人気が高まってきました。
伝統的なケフィアは、一晩を要し、常温で発酵します。ラクトース(乳糖)の発酵は、薄いヨーグルトの濃度と同程度の酸・炭酸・そして僅かなアルコールを生じさせます。ケフィアのアルコール分量は、全体の約1%未満ですので、酒税法上でも酒類の分類には入らず、もちろん乳児が飲んでもまったく問題ありません。
流通しているものとしてはKefier Mildという酵母を含まないケフィア菌で作られたものもあり、アルコールを含まないためさらに子供向きです。
ケフィアにはビタミンB2、、ビタミンB1・B6・B12、葉酸などのビタミンB群も含まれています。ビタミンB2は牛乳にもたくさん含まれていますが、ケフィアグレインの微生物たちの働きによって生まれたケフィアのほうがより多くのビタミンB2を含んでいるそうです。
牛乳に含まれているカルシウムは、量的にリンとのバランスも良く、吸収率が高いといわれており、さらに、その牛乳を乳酸発酵させたケフィアやヨーグルトの中では、乳酸がカルシウムと結びつき「乳酸カルシウム」という形になっているため、牛乳よりもさらに吸収されやすくなっているそうです。

ケフィアとハーブのディップ
  ケフィア 500 g  
  にんにく 1かけ (つぶす)
  クレソン 大さじ2 (みじん切り)
  パセリ 小さじ2 (みじん切り) 
  ディル 小さじ2 (みじん切り)
  西洋わさび(おろす) 小さじ1
  塩、胡椒
すべての材料を混ぜ合わせ、冷蔵庫で冷やす

ケフィアとパイナップルのパンチ
  ケフィア 3リットル
  パイナップル 大 (サイコロ状に切る)
  ジン 6cc
  キュラソー または コアントロー 6cc
  白ワイン 2本(1.4リットル)
  発砲白ワイン(sekt) 1本
  好みで砂糖少々
鍋に砂糖大さじ4〜5杯、少量の水をいれ煮立て、さましておきます。
その砂糖シロップに、ジン、コアントロー、白ワイン、パイナップルを混ぜ、冷やしておきます。
提供する直前によく冷やしたケフィア、sektを入れます。

ブッターミルヒ(Butter-Milch)

ブッターミルヒは少し酸味があるクリーミーな飲料です。バター製造の際に、乳脂肪から脂肪分を取り去って残る水分がブッターミルヒです。市販品はこれに乳酸菌やButterkulturと呼ばれる菌を加え発酵させているものが主流のようです。よりクリーミーに、貯蔵に適するようにするため濃縮する場合もあります。何も加えていない純粋なブッターミルヒのほか、10%まで水を加えたもの、15%まで低脂肪乳を加えたもの等、さまざまな種類があります。さらに、フルーツ味などでのみやすくしてある飲料も多く見受けられます。脂肪分は1%以下と低脂肪で、消化がよく、コレステロールを下げる働きがあります。
   

 

参考:乳製品の栄養価
食品名 kcal Portion Kolenhydrate Fette Cholesterin Protein Calcium
エネルギー 1食当りの適量 炭水化物 脂質 コレステロール タンパク質 カルシウム
(pro.100g) (g) gesamt(g) gesamt(g) (mg)   (mg)
Kuhmilch

牛乳

3,5%Fett 64 200 4,5 3,5 12 3,3 120
1,5%Fett 47 200 4,6 1,6 5 3,4 118
Buttermilch

ブッター
ミルヒ

  37 200 4,0 0,5 4 3,5 110
               
Molke

ホエー
(乳清)

sauer 21 200 4,2 0,2 2 0,6 100
süß 25 200 4,7 0,2 2 0,8 60
Crème fraîche

クレームフレッシュ

20%Fett 210 15 3,6 20,5 70 2,8 100
30%Fett 292 15 2,9 30,0 90 2,5 80
Dickmilch

ディック
ミルヒ

 
vollfett 60 150 4,0 3,3 13 3,5 120
entrahmt 31 150 4,2 0,1 1 3,4 120
teilentrahmt 44 150 4,1 1,5 6 3,4 120
Joghurt

ヨーグルト

 
vollfett 71 150 5,4 3,8 12 3,9 120
entrahmt 36 150 3,6 0,1 1 4,3 143
teilentrahmt 50 150 5,6 1,5 5 3,6 115
Kefir

ケフィア

vollfett 64 200 4,8 3,5 13 3,3 120
               
Sauer Sahne

サワー
クリーム

 
10%Fett 115 15 3,3 10,0 37 3,0 110
30%Fett 308 15 3,3 31,7 109 2,4 80
40%Fett 377 15 2,0 40,0 120 2,2 70
Schmand

シュマント

24%Fett 240 15 3,4 24,0 75 2,7 100
               
Quark

クワルク

 

 

 
<10% 68 30 3,5 0,2 1 13,0 120
10%Fett 81 30 3,2 2,0 7 12,6 120
20%Fett 104 30 3,3 4,7 17 12,0 120
30%Fett 120 30 3,4 7,4 22 10,0 120
40%Fett 155 30 3,1 11,0 37 11,0 120

 栄養成分表について

 ドイツの食品について栄養成分知るとき役に立つのが「Naehrwert und Kalorientabelle」です。
この表は、いくつかのドイツの栄養成分表を参考に乳製品のみ抜き出しました。ドイツ特有の「ブッターミルヒ」や「クワルク」などの食品は、当然ですが日本の成分表では見つける事が出来ません。
 表の見方は難しくはありませんが、栄養価の数字は全て100g中の含有量ですから注意してください。参考までに「1食あたりの適量」を添えました。例えば牛乳を200cc摂取した場合はエネルギーが128kcalになります。